横須賀芸術劇場 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団 名曲コンサート

「アランフェス」と「ジュピター」を満喫する贅沢なステージ

 最近の東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の演奏を聴いて感じるのは、一人ひとりのプレイヤーの積極性である。弦楽器の最後列の奏者まで自信をもって弾いている。2015年から常任指揮者を務めている高関健の薫陶に違いない。

 そんな高関&東京シティ・フィルのコンビがよこすか芸術劇場で名曲コンサートをひらく。まずはグリーグの「ホルベアの時代から」。高関自身がヴァイオリンの名手ということもあり、彼の指揮する弦楽合奏は本当に聴きものである。続く、ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」では、村治佳織が独奏を務める。彼女は、ギターの神童として早くから活躍し、人気を博してきた。パリに留学し、最晩年のロドリーゴにも会った。しかし、2010年代前半の一時期、病のため、演奏活動を休止していた。復帰後、最近は、オーケストラとの共演も再び積極的に行っている。天性のキレの良さに音楽的な円熟味を増した村治の「アランフェス協奏曲」の演奏がとても楽しみだ。

 演奏会の最後は、モーツァルトの交響曲第41番「ジュピター」。モーツァルトは1788年にこの作品を書いたが、91年に亡くなるまでもう二度と交響曲を書き上げることはなかった。モーツァルトにとっても、これを乗り越えるのは困難であると思うほどの傑作であったに違いない。高関の緻密かつアグレッシヴな音楽が満喫できるであろう。よこすか芸術劇場は、平土間席をバルコニー席が囲む馬蹄形の客席がヨーロッパのオペラハウスを彷彿とさせる。これも大きな魅力だ。
文:山田治生
(ぶらあぼ2021年5月号より)

2021.6/6(日)15:00 よこすか芸術劇場
問:横須賀芸術劇場046-823-9999 
https://www.yokosuka-arts.or.jp