下野竜也(指揮) 読売日本交響楽団

藤田真央も登場! 作曲家“2M”が織りなすリリシズム

 モーツァルトの中でもとりわけ愛されてきたピアノ協奏曲と、チェコのボフスラフ・マルティヌー(1890〜1959)の作品を組み合わせる凝ったプログラムである。読響の第608回定期演奏会は、2017年まで読響首席客演指揮者をつとめ、良好な関係を築いてきた下野竜也が指揮台に立つ。昨今、若い邦人指揮者の躍進が目立っているなか、下野は持ち前のエネルギッシュな音楽づくりで、近年は円熟味を増しつつある。今回は近現代作品も得意としてきた下野ならではの、斬新な響きに満ちた一夜となることだろう。

 マルティヌーはチェコを代表する作曲家のひとりで、その管弦楽作品には名作も少なくない。1920年に書かれた「過ぎ去った夢」はフランス近代を思わせる洗練された響きも印象的な小品である。マルティヌーは交響曲創作にも力を入れ、全部で6曲作曲。今回は44年作曲の第3番が演奏される。3楽章のドラマティックな書法の中に、リリカルな美しさも込められた聴き応えのある作品である。

  マルティヌー2作の間に演奏されるのが、モーツァルトのピアノ協奏曲第21番ハ長調 K.467。ピアノと管弦楽との細やかな対話による第1楽章、天国的な美しさをたたえたソロのパッセージが際立つ第2楽章、そして軽妙洒脱なロンドのフィナーレからなり、これまで幾多の名演が繰り広げられてきた。 ソリストは注目の藤田真央がアンドレ・ラプラントに変わって急遽登場。下野率いる読響との共演で、目の覚めるような快演を披露してくれることだろう。
文:伊藤制子
(ぶらあぼ2021年5月号より)

第608回 定期演奏会 
2021.5/21(金)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390 
https://yomikyo.or.jp