異才ヴァイオリニスト、コパチンスカヤが歌(声)で主役を務める「月に憑かれたピエロ」をメインに据えた注目盤。彼女は、表情豊かなバックとともに、激情を交えたダイナミックな“語り”で、本作を演劇的かつ音楽的に表現し、終始耳を引きつける。その後の各曲では、本業のヴァイオリンで刺激に富んだ演奏を展開。大胆なソロとシャープなアンサンブルが、CD全体を「多彩でユニークな新ウィーン楽派アルバム」たらしめている。小編成のシェーンベルク編ならではの妙味に溢れた「皇帝円舞曲」は特に聴きもの。普段この種の音楽に縁がない方にもお薦めの1枚だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2021年5月号より)
【information】
【CD】シェーンベルク:月に憑かれたピエロ/パトリツィア・コパチンスカヤ
シェーンベルク:月に憑かれたピエロ、ヴァイオリンとピアノのための幻想曲/J.シュトラウスⅡ(シェーンベルク編):皇帝円舞曲/ヴェーベルン:ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 他
パトリツィア・コパチンスカヤ(声/ヴァイオリン)
ミーサン・ホン(ヴァイオリン/ヴィオラ)
ジュリア・ガレゴ(フルート)
レト・ビエリ(クラリネット)
マルコ・ミレンコヴィチ(ヴィオラ)
トーマス・カウフマン(チェロ)
ヨーナス・アホネン(ピアノ)
ALPHA/ナクソス・ジャパン
NYCX-10211 ¥2970(税込)