山田和樹(指揮) 読売日本交響楽団

ベートーヴェンとR.シュトラウス、二人の英雄


 コンサートの曲目に一貫したテーマが掲げられていると、公演に対する興味がいっそう増す。しかし、まさかこんな手があったとは。
 躍進する俊英指揮者、山田和樹が読売日本交響楽団と組んだプログラムは「英雄」プロ。ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」とR.シュトラウスの交響詩「英雄の生涯」という、いわゆるメインプログラムが2曲並ぶ重量感ある組合せだ。
 ナポレオンへの献辞を紙に穴を開けんばかりの激しい筆致で打ち消したベートーヴェンの「英雄」と、この先人の傑作へのオマージュ的性格を持つ豪華絢爛なシュトラウスの「英雄の生涯」。ともに変ホ長調で書かれる。前者は3本の勇壮なホルンと当時としては異例の長大さによって、後者は四管編成による100人超の大オーケストラによって、広大無辺な楽想を実現する。ベートーヴェン作品は1804年の作曲。一方、R.シュトラウス作品は1898年の作曲。19世紀の始まりと終わりを告げる二人の英雄が並んだとも見てとれるだろう。
 山田和樹と読響の久々の共演という点でも興味深い。スイス・ロマンド管弦楽団首席客演指揮者、日本フィル正指揮者他のタイトルを持つ山田和樹だが、先頃2014年9月よりモンテカルロ・フィル首席客演指揮者就任が発表され、ますますその活動の幅を広げることに。読響の重厚かつ柔軟性に富んだサウンドをどう活かしてくれるだろうか。「英雄の生涯」ではコンサートマスター日下紗矢子のソロも聴きものとなる。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2014年1月号から)

第6回読響メトロポリタン・シリーズ★2月27日(木)・東京芸術劇場
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