山田和樹(指揮) 読売日本交響楽団

入魂のタクトとソロが炸裂するグラズノフと20世紀の傑作


コロナ禍にありながら、昨年12月から3ヵ月余り日本に滞在している常任指揮者セバスティアン・ヴァイグレと共演を重ね、好調をキープしている読売日本交響楽団。3月定期は、首席客演指揮者の山田和樹が久々に登場して、ウェーベルン、別宮貞雄、グラズノフの凝ったプログラムを披露する。

ウェーベルン「パッサカリア」op.1(1908)は、ロマンティックな抒情を漂わせながら対位法への指向を強めた意欲作。簡潔な主題が豊かな音響世界を切り開き、すべての音が雄弁で音楽の密度が濃い。山田の的確な指揮と読響の研ぎ澄まされた音で、その世界をつまびらかにするだろう。

山田はこれまで、様々な演奏会で柴田南雄、武満徹、矢代秋雄、三善晃ら、戦後日本を代表する作曲家を積極的に取り上げてきた。今回の別宮貞雄(1922〜2012)もそのひとり。別宮は、東京大学卒業後、パリでミヨーやメシアンに師事。帰国後、精力的に作品を発表し、ヴィオラ協奏曲(1971)は尾高賞受賞作。ヴィオラが悠々と旋律を歌い上げ、骨太で構築性の高いオーケストラと対峙する名曲だ。独奏は読響ソロ・ヴィオラ奏者の鈴木康浩。ソリストとしても活躍する鈴木の技巧と艶のある美音は、別宮作品でも存分に発揮されるだろう。

後半は、グラズノフ「交響曲第5番」(1895)。山田はチェコ・フィルハーモニー管弦楽団と録音するなどこの曲を得意とする。ロシアの伝統を受け継ぎ、雄大さと濃厚な色彩をもち、のびやかな旋律も美しい。山田と読響の燃焼度の高いエネルギーに満ちた演奏が楽しみだ。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2021年3月号より)

第606回 定期演奏会
2021.3/4(木)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp