ベートーヴェンと近代作品で披露する傑出した才能
日本フィルの3月の定期演奏会には、政府による入国制限のために来日できなくなった首席指揮者ピエタリ・インキネンに代わり、アジア出身の若手指揮者のなかで最も注目されている一人であるカーチュン・ウォンが登場する。ウォン自身、昨年3月に日本フィルと初共演する予定であったが、コロナ禍のために演奏会が中止となり、今回、あらためて日本フィルにデビューする。
シンガポール出身のウォンは、2016年のグスタフ・マーラー国際指揮者コンクールで優勝。これまでに、ニューヨーク・フィル、ロサンゼルス・フィル、チェコ・フィル、読響、東響、東京フィルなどに客演し、現在、ニュルンベルク響の首席指揮者を務めるなど、国際的に活躍している。クルト・マズアに師事し、ドイツ=オーストリア音楽を得意とするウォン。今回の、ショスタコーヴィチ(バルシャイ編)の室内交響曲、R.シュトラウスのオーボエ協奏曲、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」というプログラムでは、彼の魅力を満喫することができるであろう。
また、R.シュトラウスのオーボエ協奏曲で、日本フィルが誇る首席奏者の杉原由希子がソリストを務めるのも注目である。最晩年のシュトラウスの簡潔な筆致で書かれたその協奏曲はオーボエ奏者にとって演奏至難といえる。在京オーケストラのオーボエ奏者のなかでも屈指の名手である杉原がシュトラウスの協奏曲をどのように演奏するのか楽しみだ。
文:山田治生
(ぶらあぼ2021年3月号より)
第728回 東京定期演奏会〈春季〉
2021.3/5(金)18:00、3/6(土)14:00 サントリーホール
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911
https://japanphil.or.jp