都響スペシャル2021 尾高忠明(指揮) 東京都交響楽団

少女の声と麗しきオーケストラが描く生命の賛歌

尾高忠明
C)Martin Richardson

東京都交響楽団による「都響スペシャル2021」(3/15)の指揮台に登場するのは尾高忠明。武満徹の「系図ー若い人たちのための音楽詩ー」とエルガーの交響曲第1番が演奏される。武満とエルガーという、ともにマエストロ尾高が得意とする両曲が並んだ。

武満の「系図ー若い人たちのための音楽詩ー」は、谷川俊太郎の詩集『はだか』から選ばれた6篇が、少女の語りとオーケストラによって表現される。一人称で語る少女には、本来であれば12歳から15歳くらいの少女が望ましいとされているが、実際の上演ではもう少し年齢の上の女性が配されることも多い。この少女役をだれが朗読するかは毎回注目されるところだが、今回は女優の田幡妃菜に決定。そして、朗読に寄り添う精妙なオーケストラの響きは、詩の内容をニュアンス豊かに伝える(アコーディオン・ソロは大田智美)。

家族がテーマではあるが、ここに描かれる家族像は温かくもあれば、危うくもあり、ドキリとするような真実味がある。ウイルス禍での「ステイホーム」が家族のあり方を改めて考え直す機会になったという方も少なくないと思うが、その意味でもタイムリーな選曲だ。

一方、エルガーの交響曲第1番で描かれるのは、限りなく高貴で、輝かしい希望の世界である。これほど人を勇気づけてくれる20世紀の交響曲もない。今の私たちの心に響くのは、まさしくこういった音楽だろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2021年3月号より)

2021.3/15(月)18:00 サントリーホール
問:都響ガイド0570-056-057
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