夜クラシックVol.28 エール弦楽四重奏団

若き4人の出発点となったクァルテットが、10年目の“深化”を聴かせる

左より:山根一仁、田原綾子、毛利文香、上野通明
C)Hideki Shiozawa
 文京シビックホールが主催する「夜クラシック」は、19時30分開演、毎回人気アーティストがトークを交えながら室内楽の名曲をお届けするという内容で、仕事帰りでも慌てずに楽しめる好評のシリーズだ。

 2月に登場するのは若手奏者たちによって結成された「エール弦楽四重奏団」。若手といっても、ヴァイオリン山根一仁、毛利文香、ヴィオラ田原綾子、チェロ上野通明…全員がコンクールで優勝や入賞、名門楽団との共演やリサイタルを重ねる、弦楽器ファンならずともその名を知るであろう名手ばかりだ。この団体名が初見という方は“人気者たちのイベント的なグループ?”と思われるかもしれないが、結成は彼らが桐朋学園の高校生だった2011年。山根は中学3年で日本音楽コンクールを制覇していたものの、言ってみれば全員がまだ“何者でもなかった”10代での結成だったのである。いまや多忙を極める4人だが、彼らの立ち戻る“居場所”として、大切に継続してアンサンブルを深め続けている。

 この日聴かせるのはドビュッシーとシューベルト「死と乙女」、弦楽四重奏曲の代表的名作2曲。四重奏団としてのすべてが問われる演目だが、「エール」であれば、室内楽としての一体感と各自の際立つ個性が両立する、無二の演奏を作り上げるに違いない。

 団体名の「エール」とはフランス語で「翼」とのこと。その名の通りに大きく羽ばたき続ける4人が、結成10年目となる“居場所”に戻ったこの日、どんなパフォーマンスを見せるのか、大いに期待が膨らむ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2021年2月号より)

2021.2/19(金)19:30 文京シビックホール
問:シビックチケット03-5803-1111 
https://www.b-academy.jp