俊才が渾身で挑む驚嘆の無伴奏プログラム
注目のチェリスト、岡本侑也が無伴奏リサイタルを行う。2017年エリザベート王妃国際音楽コンクールの第2位入賞で脚光を浴びた彼は、第一線で演奏活動を展開しつつ、ミュンヘン音楽大学でさらなる研鑽を積んでいる。すべての音を完璧に奏でながら音楽の持つ凄みを表出するその演奏は、技巧・表現力ともに抜群。特に訴求力の強さは、精鋭居並ぶ若手チェロ奏者の中でもひと際光っている。ゆえにそれが全面に出される無伴奏公演を見逃すことはできない。
プログラムがまた凄い。まずトッパンホールの公演。バッハの無伴奏組曲の中でもシリアスな難曲=第5番に、タイプが違いながらも最高度の技巧と繊細な表現力や巧みな構成力を求められるヒンデミット、デュティユー、カサド、クラムの作品が続く。そしてトッパンホールが「ジャン=ギアン・ケラスのためのめちゃくちゃ難しい曲」との希望で委嘱した超絶技巧作品、藤倉大の「osm」。岡本は19年に当ホールで初演者ケラスをも凌ぐ迫真的名演を展開しており、ここは一層の深化に期待が集まる。しかも今回は、要所で彼を後押ししてきた“弦のトッパン”における初の本格的リサイタル。渾身の凄演の予感が濃厚に漂う。
また初リサイタルとなる高崎芸術劇場では、バッハ、ヒンデミット、デュティユー、クラムの作品に加えて、黛敏郎とソッリマの定番曲が披露される。なかでも、トッパンホールでも過去に演奏し、緻密にして大胆な表現で驚嘆させた黛の「BUNRAKU」は必聴だし、この2曲によってプログラムの普遍性が増している点も魅力となる。
いずれも俊才の真価をフルに体感できる刮目すべき公演だ。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2021年2月号より)
*高崎芸術劇場公演の曲目に一部変更がございます。詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
高崎芸術劇場 大友直人 Presents T-Shotシリーズ vol.3
2021.2/21(日)13:30 高崎芸術劇場 音楽ホール
問:高崎芸術劇場チケットセンター027-321-3900
http://takasaki-foundation.or.jp/theatre/
岡本侑也(チェロ) —無伴奏—
2021.2/28(日)15:00 トッパンホール
問:トッパンホールチケットセンター03-5840-2222
https://www.toppanhall.com