アルバムタイトルに“The”を冠したくなるような、これぞ文字通りの「イギリス愛唱歌集」。〈サリー・ガーデン〉や〈夏の名残の薔薇(庭の千草)〉、〈アメイジング・グレイス〉など全23曲を収録、おそらく誰もが何らかの形で耳にしたことのあるメロディばかりだろう。それゆえ聴き手としてはともすると安易な抒情に流される可能性があるのだが、演じるは百戦錬磨のイギリス歌曲の達人、辻裕久となかにしあかね故どの曲も手垢にまみれていない清新な歌・演奏とアレンジが横溢。なかにしによるライナーノーツは曲の起源・由来を簡明かつ的確に記述、非常に興味深くためになる。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2021年1月号より)
【information】
CD『The Water is Wide―イギリス愛唱歌集―/辻裕久&なかにしあかね』
サリー・ガーデン、広い河の岸辺、夏の名残の薔薇(庭の千草)、アメイジング・グレイス/H.ビショップ:ホーム・スイート・ホーム(埴生の宿)/C.コンヴァース:いつくしみ深き/H.ガントレット:ダビデの町に/L.メイソン:もろびとこぞりて/メンデルスゾーン:天には栄え 他
辻裕久(テノール)
なかにしあかね(ピアノ/編曲)
コジマ録音
ALCD-7250 ¥2800+税