今年開館30周年を迎えた東京・池袋の東京芸術劇場。地道な企画と着実な歩みで、存在感のある劇場へと進化を遂げてきた。劇場と事業提携を結ぶ読売日本交響楽団による記念演奏会は、指揮にフランスの俊英マキシム・パスカルを迎えて、華麗なフランス音楽で開館を寿ぐ。
パスカルは1985年生まれ。パリ国立高等音楽院でフランソワ=グザヴィエ・ロトに師事した。近現代作品のスペシャリストとしてドビュッシー、ラヴェルからブーレーズに至るフランス音楽で高く評価され、シュトックハウゼンの連作オペラ《光》のプロジェクトもパリで進行中だ。日本では昨年、東京二期会制作の黛敏郎《金閣寺》の指揮で話題を集めた。オーケストラコンサートは、今回が東京デビュー。若き才能に期待が高まる。
一方、ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」では人気の若手、反田恭平が登場するのも注目だ。コロナ禍でも有料コンサートの配信やYouTubeでの発信など新しい挑戦を続け、10月にはオーストリア・ウィーン楽友協会にデビューを果たした。単一楽章のラヴェルの協奏曲は、濃厚でジャズの語法も含む難曲。反田は溢れる情熱と卓抜の技巧で圧倒しつつ、ふと見せる素直な表現やしなやかな感性で聴き手を惹きつける。ラヴェルの演奏も楽しみだ。そして、ドビュッシー「海」とラヴェル「ラ・ヴァルス」はともに、オーケストラの醍醐味が発揮される作品。好調の読響が、きらめく音響でスケールの大きな演奏を聴かせてくれるだろう。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2020年12月号より)
2020.12/4(金)19:00 東京芸術劇場コンサートホール
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296
https://www.geigeki.jp