日本フィルハーモニー交響楽団 第九特別演奏会2020

ベートーヴェン・イヤーの記憶に残る「第九」公演


 年末恒例となっている日本フィルの第九特別演奏会が今年も開催される。新型コロナウイルス感染拡大で最も影響を受けた音楽のジャンルは声楽や合唱に違いないが、様々な困難を乗り越えて、「第九」が上演されるのは喜ばしい。

 今年は、二人の指揮者が登場する。一人は、日本フィルの桂冠名誉指揮者である小林研一郎。2020年は彼の生誕80年を祝して様々な演奏会が企画されていたが、コロナ禍によって多くは延期や中止となった。しかし、マエストロには、入国制限された外国人指揮者の代役のオファーが殺到。いつにも増して精力的に指揮活動を行っている。小林は9歳のとき「第九」を聴いて、作曲家を志したという。つまり、彼にとって、「第九」は、音楽の道を選ぶきっかけとなった特別な作品なのである。小林は、若い頃から、ベートーヴェンの場合、楽譜の行間に書かれた宇宙が何を語っているのか追求し続けなければならないと述べてきた。今まさに円熟の極みといえる「第九」を聴かせてくれるに違いない。

 もう一人は、飯森範親。この10月に新国立劇場のシーズン・オープニングの《夏の夜の夢》を、急遽、代役で指揮して成功に導き、ますます評価を高めている。飯森が指揮を執る12月19日、20日の公演には、中村恵理や大西宇宙ら、世界的に活躍する今が旬の日本人歌手が登場するのも注目である。ベートーヴェンの生誕250年の締め括りにふさわしい華やかな「第九」となるだろう。
文:山田治生
(ぶらあぼ2020年12月号より)

飯森範親指揮
2020.12/19(土)17:00 横浜みなとみらいホール 
12/20(日)14:00 サントリーホール

小林研一郎指揮
2020.12/22(火)19:00 サントリーホール 
12/23(水)19:00 横浜みなとみらいホール
12/26(土)、12/27(日)各日14:00 東京芸術劇場コンサートホール

11/24(火)発売 12/19のみ11/19(木)発売
問:日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 
https://japanphil.or.jp
※演目とソリストの詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。