ジャズ界の鬼才が楽聖をトリビュート、オマージュ曲も!
これまでも自身のスペシャル・ビッグバンド(アレンジャーはトロンボーン奏者の松本治)でクラシック音楽の大胆アレンジを聴かせてきた山下洋輔が、今度はアニヴァーサリーをむかえた楽聖ベートーヴェンをトリビュート!? しかもこの企画は、35年前にバッハの生誕300年記念の公演をおこなっていた山下に、東京芸術劇場から企画を持ちかけたもの。面白がった山下が快諾して、本公演は生まれた。
山下は日本を代表するジャズ・ピアニストとして知られるが、もともとは国立音楽大学の作曲科卒。なんと1曲目に演奏されるピアノ・ソナタ第6番ヘ長調第1楽章は、山下が大学受験の副科ピアノ試験で弾いた楽曲なのだ(演奏は約60年ぶり!?)。続けて、ピアノソロで「悲愴」第2楽章や「エリーゼのために」が山下のアレンジと即興を交えて演奏され、後半にはパーカッショニスト八尋知洋とヴァイオリニスト・マレー(金子)飛鳥が率いる弦楽四重奏が曲によって出入りしつつ、「月光」第1楽章、「第九」第2楽章、「運命」第1楽章を披露する。これまでも人気ジャズ・ピアニストの山中千尋が「エリーゼのために」「運命」などをジャズ化してきたが、山下はどのように料理してくるのか興味は尽きない。そしてコンサートを締めくくるのは、山下が書き下ろすベートーヴェンへのオマージュ曲。78歳を迎えたジャズ界の巨匠が、音楽史に革命を起こしたベートーヴェンと真摯にむきあった時、どんな新しい音楽が生まれるのだろうか!
文:小室敬幸
(ぶらあぼ2020年10月号より)
2020.10/16(金)19:00 東京芸術劇場コンサートホール
問:東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296
https://www.geigeki.jp