白石光隆 ピアノリサイタル Vol.33

柔軟な音楽性を生かした多面性を味わうプログラム

C)岩切 等
 アメリカで研鑽を積み、帰国後はソロにアンサンブルなど幅広い分野で活躍を続ける白石光隆。彼が毎年東京で定期的に開催しているリサイタルが、今回で第33回を迎える。

 柔軟な音楽性が持ち味の白石はレパートリーも幅広く、今回もそれを存分に発揮した内容である。ヘンデルにシューマン、さらにヤナーチェクやフォーレ、ローゼンブラットまでを一晩のプログラムに並べてしまうことができるピアニストはそういないだろう。白石の輝かしい音色と軽快なリズム感を楽しめるのは間違いないが、特に注目したいのがロシアのコンポーザー・ピアニスト、ローゼンブラットによる「パガニーニの主題による変奏曲」。多くの作曲家が変奏曲を書いたパガニーニの「24のカプリース」終曲のテーマを主題とし、スウィング・ジャズの要素に加えて充実した対位法も駆使され、ピアニストの様々な可能性を示す超難曲である。それだけに、白石のピアニズムの多面性を特に味わうことができるだろう。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2020年8月号より)

2020.9/9(水)19:00 東京文化会館(小)
問:プロアルテムジケ03-3943-6677 
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