シューマンのヴァイオリン作品は、この楽器ならではの華やかさを発揮しにくい難しさがあるが、日独で活躍し、ウィーン・フィルでも演奏した名手・白井圭と、シューマンをライフワークとしている名匠・伊藤恵が、ひとつの回答を提示した。古典作品と向き合うようなスタンスで楽譜に接し、中音域を丁寧に弾きこむことでシューマンの意図をすくい上げ、見通しの良い美しさと淡いロマンを聴かせる。特に作曲者41歳の落ち着いた充実感が込められたソナタ第2番は、聴きごたえ十分の作品と演奏であり、心に残る。3つのロマンスの配置を分け、謎めいた「予言の鳥」で締める工夫も面白い。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年8月号より)
【information】
CD『シューマン:ヴァイオリンとピアノのための作品集 /白井圭&伊藤恵』
R.シューマン:ロマンス 第1番〜第3番、ヴァイオリン・ソナタ 第1番・第2番、予言の鳥(L.アウアー編)
白井圭(ヴァイオリン)
伊藤恵(ピアノ)
フォンテック
FOCD9835 ¥2800+税