アーティストメッセージ(63)〜小川加恵(デンハーグピアノ五重奏団、フォルテピアノ)


 皆様、お元気でお過ごしでしょうか。まずは世界中で新型コロナウィルスとの長い戦いが続く中、今もその最前線で多くの命を救って下さっている医療従事者の方々をはじめ、我々の命や、生活を守るため様々な分野で支えて下さっている皆様に心から御礼申し上げます。

 コンサート会場で皆様にお会いすることがこんなに難しい世の中に変わってしまうなど、つい数ヵ月前には想像もしない出来事でした。相次いで公演は中止・延期となり、コンサートを楽しみに待っていて下さった皆様や、開催のためにご尽力いただいた主催者の皆様にもお会いすることが叶わず、意気消沈する毎日を過ごしておりました。

 そんな日々から2ヵ月あまり、終わりの見えない戦いに不安な気持ちを抱きながら、同時に新しい世界への希望をどこかに見出そうとしている自分がいます。今年はベートーヴェン生誕250年のアニヴァーサリー・イヤーを、彼の音楽とともに皆様とお祝いできますことを楽しみにしておりました。ベートーヴェンをはじめ、感染症の脅威に立ち向かった作曲家たちは数多くいます。音楽は彼らに希望の光を照らし続け、そのたびに彼らは脅威に打ち克ち、芸術の灯火が消えることはありませんでした。奇しくも同じ境遇にある現在、我々も音楽の力を信じ、この困難な時をともに乗り越えていけたらと思います。