アーティストメッセージ(45)〜ヴィタリ・ユシュマノフ(バリトン)

 コロナで世界中困っている人が多いですし、本当に大変なことになってしまいましたね。もちろん、コンサートやイベントなどキャンセルになっているのは残念ですが、仕方がないことです。お客様にとってはエンターテイメントで、アーティストにとっては仕事。
その機会が思うようにない今、苦しいこともありますが、お互いに頑張りましょう!

私も出演する予定だった新国立劇場のヘンデルのオペラ 《ジューリオ・チェーザレ》 も、今回キャンセルになりました。劇場の皆さんはギリギリまでこのプロダクションをキープするために頑張って下さったことはとてもありがたいことでした。心から感謝しています。
今回の《チェーザレ》は私にとって初めてのことだらけの挑戦でした。バロックオペラは初めて、新国立劇場の本キャストも初めて、私自身とても楽しみにしていたのですごく寂しいですが、またいつか再演できると信じています。

そうして3月末からの2週間の間に秋までの公演が次々とキャンセル、延期になってしまい、本当にショックを受けました。私のキャリアのスタートから数ヵ月の間本番がないことは初めてのことです。メールが届いたり、電話が鳴ったりするたびに、「あ、また何かがキャンセルになったのだろうか」と嫌になってしまって、ずっと心の中で泣いていました。

でも、長く泣くことが出来ない私は「では、仕方がないから時間を無駄にしないようにしよう!」と自分の中で決めました。以前から「いつかやってみたい」と思っていたことを実行するチャンスだと。「私を読んでください」と待っていた本を今こそ読み、ジムに行けない分、家でトレーニング。「いつか歌ってみたい」と思っていた曲も歌うチャンスです。オンライン配信やビデオの制作など、家の中でも出来ることをどんどんやってみようと。

趣味でお菓子や色々な料理を作ることが大好きで、「いつか日本の皆さんに本当のロシア家庭料理を紹介したいな」とずっと思っていたので(ロシア料理はピロシキとボルシチだけではないのです(笑))、そんなレシピをまとめた本を書き始めました!

とりあえず、「ウツにならないように忙しくしよう!」と思いました。いつか明るい日が絶対戻るから。

今のようなときこそ音楽がとても必要だと思います。早く世界中の方々の日常が戻ってくるように、また音楽をZoomによってではなくて、生でコンサートホールで聴けるようになることを祈っています。