集中的にバッハに取り組んだのちに福田進一が挑戦したバロック作品集が本作。イタリアのフレスコバルディからドイツのヴァイス、フローベルガー、そしてフランスのルイ・クープランなどを取り上げ、バロックの伝播の流れが文字通りの国別年代記=クロニクルズという形で見事に結実している。スカルラッティでの上品で柔らかな歌いまわし、ヴァイスのチャコーナにおける明晰さ、ラモーの躍動、そして最後のグルックでの情感。曲によっては自身でアレンジも行なっているが、どの曲も福田のフレキシブルな技巧と表現力が十全に生かされていて唸る。派手さはないが繰り返し聴きたくなる名盤。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2020年6月号より)
【information】
CD『バロック・クロニクルズ/福田進一』
D.スカルラッティ:ソナタ K.9, K.380, K.322, K.206, K.149/ヴァイス:チャコーナ/フレスコバルディ:アリアと変奏「ラ・フレスコバルダ」/フローベルガー:パルティータ第4番/L.クープラン:トンボー〜ブランロシェ氏に捧ぐ/ラモー:メヌエットとリゴードン/グルック:精霊の踊り 他
福田進一(ギター)
マイスター・ミュージック
MM-4077 ¥3000+税