若手ヴァイオリニストの中でも際立った活躍を続ける郷古廉が、「ベルギーもの」を集め、フランコ=ベルギー派の名匠もかくやという豊かな音色を聴かせる。24歳で早逝したルクーの名品は、青年の憧れと憂愁に満ちたロマンを、精妙なニュアンスで表現した名演。フランクの名作は、あえて淡々と歌いはじめて自然に大きい抑揚を作ることで、作品本来の感動を明らかにしていく。穏やかな冒頭から最終楽章の高揚感まで全体の設計も秀逸、実に懐が深い。イザイの佳品でのユニークな表現も聴きもの。加藤洋之のピアノは音楽的な名技がすばらしく、演奏に深い奥行きを与えている。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年3月号より)
【information】
SACD『ベルギー・アルバム LA BELGIQUE/郷古廉&加藤洋之』
ルクー:ヴァイオリン・ソナタ/イザイ:子供の夢、冬の歌/フランク:ヴァイオリン・ソナタ
郷古廉(ヴァイオリン)
加藤洋之(ピアノ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00695 ¥3200+税