2000年11月に東京オペラシティで行われた小松英典とイェルク・デームスの「冬の旅」のライヴ録音が、この4月に亡くなったデームスの追悼盤として初登場。極めて整ったディクションを駆使し独墺圏の歌手に勝るとも劣らぬ「正統的な」歌唱を聴かせる小松の名唱もさることながら、その小松にどこまでも親密に寄り添って、ある時には非常に内省的に、またある時には非常に切迫した表現を披露するデームスのサポートはこの曲/ドイツリートを知り尽くした練達の業としか言いようがない。これがこの「冬の旅」にどれだけの深みと拡がりを提供していることか。デームス追悼盤として誠に相応しい1枚。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2020年1月号より)
【information】
CD『シューベルト:冬の旅/小松英典&イェルク・デームス』
シューベルト:歌曲集「冬の旅」、歌曲集「白鳥の歌」より〈街〉、さすらい人の夜の歌
小松英典(バリトン)
イェルク・デームス(ピアノ)
収録:2000年11月、東京オペラシティ コンサートホール(ライヴ)
コジマ録音
ALCD-9208 ¥2800+税