紀尾井ホール開館25周年記念演奏会トレヴァー・ピノックのモーツァルト「レクイエム」

モダンオケでも活躍する古楽界の巨匠が一期一会の名演を


 新しい世代の古楽系指揮者も話題となるなか、古楽ムーブメントを牽引してきた音楽家が次々とこの世を去る昨今だからこそ、御年73歳トレヴァー・ピノックの存在感はもっと意識されてよいだろう。手兵イングリッシュ・コンサートとともに録音されたバッハやモーツァルトは、今後もファーストチョイスになりうる名演ばかり。今世紀に入ってからはベルリン・フィル、コンセルトヘボウ管、フランス国立管といった世界各地のモダンオケでも、スタイリッシュでありながら実に濃密な音楽を聴かせてくれている。

 そんなピノックがたびたび共演してきた紀尾井ホール室内管弦楽団(旧称:紀尾井シンフォニエッタ東京)の創立25周年記念公演にあわせ、4年ぶりに帰ってくる。曲目は2004年と12年の共演でも絶賛を博した、得意のモーツァルトだ。ベルリン・フィルに客演した際にも取り上げた得意曲である交響曲第40番ト短調に、天上的な世界を感じさせる「アヴェ・ヴェルム・コルプス」、そして締めはモーツァルトの絶筆である「レクイエム」と晩年の傑作ばかりが揃う。演奏者もアルトを歌うカウンターテナーの青木洋也をはじめ、望月万里亜、中嶋克彦、山本悠尋といった古楽を得意とする独唱陣、東京藝大卒の若手を中心とした精鋭ばかりの合唱団と、役者の揃った顔ぶれになっているため期待してよさそうだ。現在、英国王立音楽院の室内オーケストラの首席客演指揮者として若人とともに日々演奏をおこなうピノックが、日本の若き音楽家たちと一期一会の火花を散らすのだから!
文:小室敬幸
(ぶらあぼ2020年1月号より)

2020.2/8(土)、2/9(日)各日14:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 
http://www.kioi-hall.or.jp