これは心地よい1枚。音が伸びていくオーボエと、発音したらすぐに消えていくギター。ありそうでなかった組み合わせの妙は意外な発見だが、それを満喫できるのも、オーボエ池田昭子とギター福田進一、トップクラスの名手たちの親密でニュアンス豊かな演奏あってこそ。池田得意のイングリッシュホルンでのシューベルト歌曲は、謙虚な歌い回しに宿る深い情緒がすばらしい。この編成のオリジナル曲を残したコストとピルスの愛らしい佳品は美しく、グリーグ「抒情小曲集」編曲は新たな魅力を引き出すような練達の演奏。聴くほどに心が穏やかになっていく、懐深いアルバムだ。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2020年1月号より)
【information】
CD『白鳥の歌 オーボエとギターのための作品集/池田昭子&福田進一』
グリーンスリーブス/J.S.バッハ/グノー(福田進一編):アヴェ・マリア/シューベルト(コスト編):「白鳥の歌」より/コスト:慰め、悔悟/ピルス:オーボエとギターのためのソナチネ/グリーグ(ミューラー=ペリング編):「抒情小曲集」より〈ノルウェーの旋律〉〈思い出〉 他
池田昭子(オーボエ/イングリッシュホルン)
福田進一(ギター)
マイスター・ミュージック
MM-4069 ¥3000+税