繊細で、凛とした空気感を漂わせる美しい音色が魅力の鮫島明子。前作の『モーツァルト ピアノ名曲選』ではその音色を最大限に活かした軽やかなピアニズムを聴かせてくれたが、今回はオール・ショパン・プログラム。美しさの中に晩年のショパンの苦しみや悲しみなど様々な心象風景を漂わせ、より作品との強い対峙を窺わせる演奏を繰り広げている。3つのマズルカの足取りの軽やかさには溢れるセンスが光り、舟歌や子守歌では息の長い歌い回しが心地よく響く。そして、ピアノ・ソナタ第3番と「幻想ポロネーズ」では、ショパンの中に蠢く様々な感情を鮮烈に描き出している。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2020年1月号より)
【information】
CD『ショパン 芸術の精華〜晩年の作品より〜/鮫島明子』
ショパン:ピアノ・ソナタ第3番、マズルカ第36番〜第38番、舟歌、子守歌、幻想ポロネーズ
鮫島明子(ピアノ)
ライヴノーツ
WWCC-7910 ¥2500+税