ヘルムート・ライヒェル・シルヴァ(指揮) 東京交響楽団

スペインにまつわる多様な音楽を集めた意欲的なプログラム


 東京交響楽団の2月川崎定期はスペイン音楽プログラム。2017年の共演で評判を呼んだヘルムート・ライヒェル・シルヴァが指揮を担う。ライヒェル・シルヴァはチリ生まれのドイツ系で、音楽監督ジョナサン・ノットが太鼓判を押す逸材。トランペットにエリック・ミヤシロ、ギターにラファエル・アギーレとソリスト陣も強力だ。

 プログラムがおもしろい。リムスキー=コルサコフの「スペイン奇想曲」、天野正道の「ウナ・オベルテューラ・エスパニョーラ・ファルサ『エル・ハルディン・デ・ロス・レクエルドス』」(管弦楽版初演)といった非スペイン人によるスペイン趣味の音楽と、ロドリーゴの「アランフェス協奏曲」、ファリャのバレエ「三角帽子」第2組曲という純然たるスペイン音楽が組み合わされている。外から見たスペイン、中から見たスペインとでもいうべきか。

 天野作品の原曲はJR東日本東北吹奏楽団委嘱作。その管弦楽版の初演となる。「ウナ・オベルテューラ……」というとても長いスペイン語の曲名をあえて訳せば、「偽スペイン序曲『思い出の庭』」といったところだろうか。エリック・ミヤシロによるトランペットの抜けるようなハイトーンが聴きもの。

 アランフェス協奏曲で独奏を務めるアギーレは、フランシスコ・タレガ国際ギターコンクールをはじめ数々のコンクールで受賞歴を誇る気鋭。マドリードを拠点とするアギーレにとって、この曲は十八番だろう。
文:飯尾洋一
(ぶらあぼ2020年1月号より)

川崎定期演奏会 第74回
2020.2/1(土)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール
問:TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 
http://tokyosymphony.jp