松本和将が、毎回深い探求のうえで臨むリサイタルシリーズのライヴ録音。ブラームスからは若き日のピアノ・ソナタ第3番。思い切りの良い打鍵で、重く厚みのあるハーモニーが気持ち良く鳴らされ、またそれにより穏やかなパートの音が生きる。作曲家の気迫と豊かな感情が見事に浮かび上がる。続くシューマン「幻想曲」は、はっきりとしたタッチを保ちつつも音が柔らかさをまとい、入り組んだ音楽が示す心情を届けてくれる。ブックレットの解説は松本自身によるもので、作品にどう近づいていったのかを伝えている。音楽が語ることをより受け取る手掛かりとなって興味深い。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2020年1月号より)
【information】
CD『松本和将 ライブシリーズ8 ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 op.5 他』
ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番/シューマン:幻想曲 ハ長調
松本和将(ピアノ)
収録:2018年11月、東京文化会館(小)(ライヴ)
タクトミュージック
TACD-157 ¥3000+税