紀尾井ホール室内管弦楽団アンサンブル・コンサート5

小編成版で醸し出す20世紀初頭ウィーンの息吹

世界のトップオケの奏者もメンバーに擁する紀尾井ホール室内管弦楽団は、その人脈を生かしパリ管やバイエルン放送響の奏者たちとの豪華コラボを実現してきた。第5回となるアンサンブル・コンサートは首席指揮者ライナー・ホーネックがコンマスを務めるウィーン・フィルのメンバー3名、すなわちゼバスティアン・ブル(チェロ)、カール=ハインツ・シュッツ(フルート)、ソフィー・デルヴォー(ファゴット)を迎えて、ウィーンゆかりのプログラムを披露する。

ドイツ語訳漢詩に基づく交響的作品「大地の歌」は、作曲者のマーラーが初演を待たずして世を去りオーケストレーションの改訂ができなかったため、歌手と管弦楽のバランスが演奏者にとっての難題となるが、シェーンベルク(途中からライナー・リーン)による室内楽編曲版ではこの点が解消されている。メゾソプラノのミヒャエラ・ゼーリンガー、テノールのアダム・フランスン共に躍進著しい若手だが、その伸びやかな声が透明感のあるオーケストラからくっきりと浮かび上がるだろう。

コンサートの前半には、ニューイヤーにふさわしくJ.シュトラウスⅡのウインナ・ワルツが3曲配され、新春の晴れがましい気分を盛り上げてくれる。こちらもシェーンベルク(「入り江のワルツ」「皇帝円舞曲」)やベルク(「酒、女、歌」)が編曲したもの。実はこうした編曲はシェーンベルクが第一次大戦後にウィーンに設立した「私的演奏協会」のためになされた。主に先鋭的な音楽の紹介を目的とした演奏団体で、より小回りの利く編成で質の高い音楽を提供していたのである。100年前の進取の精神を体現したプログラムを通じ、この音楽の都の歴史の息吹も感じ取りたい。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年12月号より)

紀尾井ホール室内管弦楽団アンサンブル・コンサート5
マーラー「大地の歌」〜ウィーン・フィルのメンバーを迎えて
2020.1/17(金)19:00 紀尾井ホール
問:紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061
http://www.kioi-hall.or.jp/