“詩と音楽”という視点から時代を鮮やかに切り取る
「バッハ(B)からコンテンポラリー(C)へ」。東京オペラシティの「B→C」に、加速度的に注目を集める駒田敏章が登場。2014年日本音楽コンクール優勝の明るくノーブルに響くバリトン。来年の新国立劇場《ジュリオ・チェーザレ》に起用され、以前はバッハ・コレギウム・ジャパンにも参加した経歴の持ち主なら「B」が軸になるのかと思いきや、ジョン・アダムズに始まりジョン・アダムズに終わる現代音楽プロ。「C」寄りに振りきった。本人が「本業」というロマン派ドイツ歌曲も封印。この人の守備範囲の広さ、視野の広い研究心が推察される。
大きなテーマは「アメリカ」。アダムズ作品の間にネッド・ローレムやデイヴィッド・デル・トレディチという現代のアメリカ人作曲家、そしてコルンゴルト、ヴァイル、アイスラーと、アメリカに亡命した独墺系作曲家が対置される。さらにその真ん中には、少し視点を変えて、名ピアニスト、ブレンデルの詩による歌曲も。そして各セクションの境目にバッハという鮮やかなプログラム。現代曲といっても、調性から離れない美しい作品が多いのもスマートだ。共演はピアノの居福健太郎。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2019年12月号より)
2019.12/10(火)19:00 東京オペラシティ リサイタルホール
問:東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999
https://www.operacity.jp/