押しも押されもせぬ巨匠・堤剛が、最高のセンスをもつ俊英・萩原麻未と出会い、弾きこんできた名曲で新たな境地を見せる。今回はラフマニノフとベートーヴェン第4番、対照的なソナタ2作が選ばれた。萩原独特の感性と名技による瑞々しいピアノに包まれるように、堤は激することなく静けさすら漂う演奏を展開。力業になりがちなラフマニノフから落ち着いた詩情を引き出し、後期の作風に入ったベートーヴェンとの内面的つながりすら明らかにする。バッハの無伴奏とそれをモティーフとする酒井健治の新作の録音も意義深く、バッハの名品「サラバンド」の深みはさすがの一言。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年12月号より)
【information】
CD『ラフマニノフ:チェロ・ソナタ 他/堤剛&萩原麻未』
ラフマニノフ:チェロ・ソナタ/ベートーヴェン:チェロ・ソナタ第4番/酒井健治:レミニサンス/ポリモノフォニー チェロのための/J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第5番よりサラバンド
堤剛(チェロ)
萩原麻未(ピアノ)
マイスター・ミュージック
MM-4067 ¥3000+税