華麗なるコンチェルトのジョイントステージ
ギターとピアノの人気の高い協奏曲を一夜で聴く、という魅力的なコンサートが開催される。題して「協奏曲の夕べ〜情熱のアランフェス × 輝きのモーツァルト」。ギターは国内外のコンクールで優勝&入賞に輝き、スペインでも活動を展開している河野智美によるロドリーゴ「アランフェス協奏曲」と「ある貴紳のための幻想曲」。ピアノは慶應義塾高校1年生で、イタリアなどの国際コンクールで史上最年少優勝を遂げている、いま勢いに満ちた八木大輔だ。共演は梅田俊明指揮の東京フィルハーモニー交響楽団。
まず、河野に選曲の理由を聞くと…。
「ギタリストにとってロドリーゴはとても大切な作曲家です。『アランフェス協奏曲』は長年弾いていますが、常に精神世界に引き込まれる感じです。先日、アランフェス宮殿を訪れ、宮殿のあまりのセンスの良さに驚きを覚え、ロドリーゴの作品への思いが伝わってくるようでした。この協奏曲もそうですが、スペイン作品は光と影、陽と陰が混在し、それをギターの響きで弾き分けていくことにとても魅力を感じます。『ある貴紳のための幻想曲』は、以前からずっと弾きたいと願っていました。今回が初めての演奏ですが、オーケストラとの掛け合いを重視し、原曲のガスパール・サンスの美しい旋律と溶け合ったハーモニーのすばらしさを表現したいと考えています」
河野は子どものころからギターに親しんできたが、一時期は一般企業に就職。だが、音楽への思い断ち難く、コンクールで良い結果が残せるよう一念発起してギターと向き合った。いまはギターひと筋。その情熱と強いギターへの愛着がロドリーゴで開花する。
一方の、八木は4歳のころから家にあったピアノから離れないほど、ずっとピアノを弾いていた。しかし、小学生のころは練習嫌い。やがて国際コンクールで優勝の栄冠に輝くようになり、道は決まった。
「いまは高校に通いながら音楽とも密度の濃い時間を過ごせるよう、時間配分をしています。僕はいま少年でもなく大人でもない、その中間ともいうべきとても微妙な難しい年ごろなんですよ。もやもやした思いや悩みも多く、不安定な時期です。でも、ピアノに向かうと、そのもやもやが一気に音楽に集約し、気持ちが晴れやかになります。モーツァルトは大好きで、協奏曲第21番は純粋無垢な気持ちでないと的確な表現はできません。いまの自分だからこそ演奏できる、そんな思いで演奏します。各楽章はとても美しく、モーツァルト効果というか人の心をリラックスさせるものがある。僕の演奏でそういう気持ちになってほしいですね」
なお、当夜はCDのライヴ収録も行われる予定、リリースは未定だが楽しみにしていよう。
取材・文:伊熊よし子
(ぶらあぼ2019年11月号より)
協奏曲の夕べ〜情熱のアランフェス × 輝きのモーツァルト
2020.1/29(水)19:00 サントリーホール
問:ムジカキアラ03-6431-8186
https://www.musicachiara.com/