小㞍健太(ダンサー/振付家)

ダンスと現代音楽の交錯が生み出す未知の領域

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 難解と思われがちな現代音楽を、卓越した技術で親しみやすいコンサートとして紹介し、世界的に人気が高いアルディッティ弦楽四重奏団。そしてこれまた世界に冠たるオランダのNDT(ネザーランド・ダンス・シアター)で活躍したダンサー小㞍健太とのコラボレーションが神奈川県立音楽堂と愛知県芸術劇場で行われる。

 曲目も非常に興味深い。まずは細川俊夫の新作と、西村朗「弦楽四重奏曲 第6番〈朱雀〉」だが、この2曲は演奏のみ。後半のヴォルフガング・リーム「弦楽四重奏曲 第3番〈胸裡〉」「Geste zu Vedova 〜ヴェドヴァを讃えて」の2曲を踊る小㞍に話を聞いた。

「リームの曲は『圧』が強いというか(笑)。とくに『胸裡』はリームの初期の作品で、時代に対する反抗心や野心のようなものが前面に出てギラついている。今回、曲をより深く理解したくて、音楽の専門家からレクチャーを受けているんです。そしてこの曲の様々な断片が実はつながっているなどの気づきがあり、曲想の奥に一歩踏み込めた感触があります」

 もうひとつの、前衛画家エミリオ・ヴェドヴァへ贈られた「ヴェドヴァを讃えて」はどうなのだろうか。
「この曲は最近の曲で、さすがに初期のギラギラした感じはないですね。聴きやすいのですが繰り返しが多く、そのまま踊ると単調になるおそれがあり、聴けば聴くほど難しい。そもそもヴェドヴァの絵は、思い切り振るような筆致や斬新な色使いも含めて、非常に『身体的な絵』だと思うんです。そこでダンスの方の身体性を少し変えたくて、知人のプログラマーに依頼して楽譜をデータ化し、ダンススコアのようなものを作る実験をしています。まあ本番は音楽とのやりとりで自由に踊る部分も多くなると思いますけど」

 アルディッティ弦楽四重奏団との共演には、小㞍自身も大いに燃えているという。
「こんな素晴らしいアーティストとがっぷり四つに組める機会は、そうないですからね。ライヴの演奏とダンスが、一つの曲を通して同じ空間を観客と共有する。そこで起こる反応や化学変化を重視していきたい。観客の想像力を増幅させていくような舞台にしたいですね」

 神奈川県立音楽堂は今年リニューアルを終え、音の響きも良くなったと好評だ。日本初の公共音楽専門ホールであり、今年は65周年の節目でもある。
「僕自身、創作は続けますが、年齢的にダンサーとしての節目を迎えつつあると思っています。ソロなので逃げ場もないですし、全霊を込めて、これまでにない姿をお見せしたいと思います」
取材・文:乗越たかお
(ぶらあぼ2019年11月号より)

アルディッティ弦楽四重奏団 × 小㞍健太
2019.11/30(土)15:00 神奈川県立音楽堂
問:チケットかながわ0570-015-415 
https://www.kanagawa-ongakudo.com/

12/1(日)17:00 愛知県芸術劇場(小)
問:愛知県芸術劇場052-971-5609 
https://www-stage.aac.pref.aichi.jp/