トマーシュ・ネトピル(指揮) 読売日本交響楽団

欧州でブレイク中の俊英が聴かせる自国の傑作シンフォニー


オペラとシンフォニーの両輪で活躍するチェコの指揮者トマーシュ・ネトピルが、読響定期に初登場する。現在、ドイツの名門エッセン歌劇場の音楽総監督を務め、ウィーン国立歌劇場やドレスデン国立歌劇場に客演、ベルリン・フィル等のオーケストラの指揮でも躍進するなど“チェコの次世代を担う指揮者”として注目の俊英である。

曲目は、モーツァルト《皇帝ティートの慈悲》序曲とスーク「アスラエル交響曲」のプラハで初演された2作品と、ハンガリー出身の現代作曲家リゲティのチェロ作品を組み合わせた勝負のプログラム。リゲティのチェロ協奏曲(1966)は、室内楽的な編成のオケと独奏チェロが1枚の織物を織り上げるような緻密なテクスチュアに超絶技巧が散りばめられた難曲。ソリストは、ブーレーズ指揮の「リゲティ協奏曲集」の録音に参加し、作曲家から直接指導を受けた、名手ジャン=ギアン・ケラス。その前にはケラスのアイディアでリゲティの「無伴奏チェロ・ソナタ」も。「モダンすぎる」と批判された若き日の作品だ。

後半は、20世紀チェコ音楽の土台を築いたスークの交響曲「アスラエル」(死を司る天使の名)。師のドヴォルザークの死を悼み、彼に捧げるために作曲中、妻のオティリエ(ドヴォルザークの娘)も心臓病で若くして亡くした。愛する二人を失ったスークの耐え難い悲しみが、全5楽章の交響曲に広がる。チェコの音楽家にとって大切なこの作品、ネトピルのタクトで、さらなる深い共感が生まれるだろう。
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2019年11月号より)

第593回 定期演奏会
2019.11/29(金)19:00 サントリーホール
問:読響チケットセンター0570-00-4390
https://yomikyo.or.jp/