年を重ねる喜び、そしてその先にある美しい音楽
この秋83歳となる舘野泉が「バースデー・コンサート 2019」と銘打って、誕生日2日後の11月12日に公演を行う。2019年は、日本フィンランド国交100周年の親善大使として両国5都市での記念コンサートに出演するなど、ますます充実した活動を続ける舘野。国内外の作曲家から彼に捧げられた「左手のピアニスト」のための作品はすでに100曲に及ぶ。02年の脳溢血で右半身不随になって以来、舘野がこれまで大切に、自然に、真摯に向き合い築き上げてきた音楽の世界が、このバースデー・コンサートでも柔らかに咲きそろう。
この日は2作品が世界初演される。一つはフィンランドの巨匠カレヴィ・アホによるピアノ五重奏曲「MYSTERIUM」で、息子のヴァイオリニスト、ヤンネ舘野と共演する。もう一つは、これまでも舘野からの委嘱作の数々を世に送り出してきたアルゼンチン出身の作曲家パブロ・エスカンデの「アヴェ・フェニックス“紅の風”」。永遠の象徴である火の鳥の世界を、金管アンサンブルと打楽器との共演で奏でる。
後半は吉松隆の「KENJI…宮澤賢治によせる」だ。吉松が選んだ8篇の宮澤賢治の詩の朗読、ピアノによって描き出される深く優しい世界。舘野自身、涙無くしては弾けないというこの感動作は、女優・草笛光子の語りとともに15年より全国各地で上演されてきた。この夜再び、聴き手を銀河の遥か彼方へといざなってくれることだろう。
文:飯田有抄
(ぶらあぼ2019年11月号より)
2019.11/12(火)13:30 東京オペラシティ コンサートホール
問:ジャパン・アーツぴあ0570-00-1212
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