日下紗矢子(ヴァイオリン)

ベルリンの精鋭たちをリードし、意欲的な音楽で魅せる!

©Kiyoaki Sasahara

 日下紗矢子は、ベルリン・コンツェルトハウス管と読響のコンサートマスターを兼務しながら、ソロや室内楽でも実りある活動を展開している名ヴァイオリニスト。12月には、ベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラの日本公演をリードする。

 コンツェルトハウス管の精鋭が集う同室内オケは2009年に創設され、日下は当初からリーダーを務めている。
「若い世代のメンバーが指揮者なしで自分たちの音楽を作りたいと望んで活動を始め、現在は年に3〜4回の定期演奏会をはじめ5〜6プロジェクトを行っています。バロックから近現代、室内楽から管楽器を含む曲等まで、フレキシブルな編成とプログラムが魅力の一つ。私は、演奏の基本コンセプトを決めて、楽譜にすべてのボウイングを書き込み、皆の意見を集約しながら音楽作りを進めていますが、10年やってきてメンバーの意識も高まり、まとまりのあるグループになってきたと感じています」

 過去の来日公演でも、豊麗かつ緻密で自発性に溢れた演奏を披露している同楽団。今回は、来日4回目にして初めて東京都心(東京文化会館)で公演を行う他、横浜等4都市を訪れる。プログラムは前半がバロック、後半が北欧等のロマン派から近代もの。中でも注目されるのが、東京と横浜で演奏するグリーグの弦楽四重奏曲ト短調の弦楽合奏版(日下自身の編曲)だ。

「昨年末の公演とCD録音(来日前にリリース)で取り上げたのですが、豊かな曲想を持ち、起伏にも富んだ素晴らしい作品なので、今回もぜひ演奏したいと思いました。編曲は、四重奏の方が映える場面は編成を減らしたり、高揚する場面にコントラバスを加えたりしています。かなりソロイスティックですし、合奏での演奏も難しいのですが、きっと楽しんでいただけると思います」

 バロックの方は、ジェミニアーニ、ヴィヴァルディ、コレッリの協奏曲(東京他)と「四季」等(横浜他)の2種類が用意されており、日下はむろんソロも弾く。
「ジェミニアーニの『ラ・フォリア』も激しい感情をもった名曲。コレッリの作品ともども2人のヴァイオリンとチェロがソロを受け持つ合奏協奏曲は、今だからできる挑戦でもあります。それにヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲『ムガール大帝』は、第3楽章の最後に約3分の長いカデンツァがある意外な超絶技巧曲。通常より長い15分ほどの聴き応えがある作品です」

 日下は去年からバロック・ヴァイオリンも弾き始め、「バロック音楽の見え方が変わった」と話す。「四季」等のソロを含めてその表現の変化も要注目だ。
 来年4月には出身地の芦屋市で新たな音楽祭を始めるとのこと。意欲的な彼女の音楽活動にさらなる熱視線を注ぎたい。
取材・文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年11月号より)

ベルリン・コンツェルトハウス室内オーケストラ 2019年来日公演
2019.12/6(金)14:00 フィリアホール(045-982-9999)
12/8(日)15:00 福岡/宗像ユリックス ハーモニーホール(0940-37-1483)
12/9(月)19:00 東京文化会館(小)(メロス・アーツ・マネジメント03-3358-9005)
12/14(土)14:00 兵庫県立芸術文化センター(0798-68-0255)
12/15(日)16:00 昌賢学園まえばしホール(前橋市民文化会館)(027-221-4321)
https://www.melosarts.jp/ 
※公演によりプログラムは異なります。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。