対照性著しい選曲と知的で熱いアプローチ
ヨーロッパ各地で名教師に師事し、アルゲリッチや五嶋みどりと共演するなど、国内外での活躍が目立つヴァイオリニストの弓新が、青山音楽賞新人賞の研修成果披露演奏会に出演する。
演目はグラス「ストラング・アウト」、佐藤聰明「歪んだ時の鳥たちⅡ」に、ブロッホ第1番とブゾーニ第2番のヴァイオリン・ソナタ。よほどのヴァイオリン愛好家でも、すべてを聴いたことのある人は少ないのでは。グラスと佐藤の作品は現代的だが聴きやすい作風ながら、都会的な前者と自然を感じさせる後者、その対照が興味深い。両ソナタも、民族的でワイルドな情熱と憂愁が込められたブロッホと、世紀の境目に作られた後期ロマン派の作風が美しいブゾーニ、やはり対照性を見出せる大作だ。
弓の知的かつ情熱あふれる演奏でこそ聴きたいユニークな演目からは、彼の覚悟がひしひしと伝わってくる。現代作品を中心に成果を挙げている名ピアニスト、ヴラディミール・イヴァノフ=ラキエフスキーの存在も心強く、意義深い公演になるはず。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年11月号より)
2016年度青山音楽賞新人賞受賞研修成果披露演奏会
弓 新 ヴァイオリンリサイタル
2019.11/10(日)15:00 京都・青山音楽記念館〈バロックザール〉
問:青山音楽記念館075-393-0011
https://barocksaal.com/