ウィーン・フィルの首席奏者による“現代音楽”のフルート作品集。1951〜82年に書かれた20世紀の代表作が7曲、しかも無伴奏3曲、ピアノとのデュオ3曲、アンサンブル1曲という構成は、アンソロジー的な妙味十分だし、カニーノはじめ名手揃いの共演陣も特筆される。シュッツはこうした曲でも、持ち前の温かな美音を駆使して、表情豊かな演奏を聴かせる。それでいてシャープな空気感が横溢しているので、聴く側も集中力を絶やさずに楽しめる。中でもメシアンの「黒つぐみ」や武満徹の「雨の呪文」が、日本人演奏家の秀演と相まって鮮烈な聴きもの。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年11月号より)
【information】
CD『マデルナ:甘い夢〜20世紀のフルート音楽/カール=ハインツ・シュッツ』
マデルナ:甘い夢/ベリオ:セクエンツァ Ⅰ/福島和夫:伽陀迦盧那、冥/メシアン:黒つぐみ/武満徹:声(ヴォイス)、雨の呪文
カール=ハインツ・シュッツ(フルート)
ブルーノ・カニーノ 高橋アキ(以上ピアノ)
四戸世紀(クラリネット)
篠﨑史子(ハープ)
山口恭範(ヴァイブラフォン)
収録:2017年8月、草津音楽の森国際コンサートホール(ライヴ) 他
カメラータ・トウキョウ
CMCD-28366 ¥2800+税