【CD】林望&野平一郎:演劇的組歌曲『悲歌集』

 2006年2月に津田ホールにて初演され、「演劇的組歌曲」との副題が添えられた『悲歌集』(林望・原作/作詩、野平一郎・作曲)の初録音。ギターとフルートという切り詰められた伴奏は、抑制された中にも特殊奏法による音色の追求や詩の意味内容を的確にフォローする雄弁さに富み、そしてメゾソプラノとテノールによって展開される「もう失われた恋」への追想歌は極めてドラマティック。それゆえの「演劇的」ということだろうが、そこは野平の作曲、緻密な音楽構成の妙も光る。平明さと俗に堕ちない格調を併せ持つ現代の傑作と呼びうる「恋歌」であろう。初演者4名による演奏は言うまでもなく十全。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2019年11月号より)

【information】
CD『林望&野平一郎:演劇的組歌曲「悲歌集」』

林望(原作/作詩)&野平一郎(作曲):演劇的組歌曲『悲歌集』第1曲〜第7曲

林美智子(メゾソプラノ)
望月哲也(テノール)
福田進一(ギター)
佐久間由美子(フルート/アルト・フルート)

ナミ・レコード
WWCC-7907 ¥2000+税