モーツァルトなどの秀逸な録音で評価を高めている黄金デュオの最新盤。ナチュラルで誠実かつ詩情豊かなイブラギモヴァの魅力がフルに発揮された、素晴らしいアルバムだ。ブラームスのソナタ第1番の冒頭から繊細で慈しむような音楽が続き、精妙なニュアンスに溢れた演奏にただただ聴き惚れる。局部はこまやかに変化しながら、全体の造型は堅牢で音楽の流れはごく自然。ティベルギアンの雄弁なピアノも絶妙に貢献し、2番、3番と進むにつれて二人の交歓の妙がより際立っていく。最後に置かれたクララ・シューマンの小品もアイディアを含めてチャーミングだ。強くお薦めの1枚。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年11月号より)
【information】
CD『ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ全集/アリーナ・イブラギモヴァ&セドリック・ティベルギアン』
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番〜第3番/クララ・シューマン:アンダンテ・モルト(3つのロマンスより)
アリーナ・イブラギモヴァ(ヴァイオリン)
セドリック・ティベルギアン(ピアノ)
Hyperion/東京エムプラス
PCDA68200 ¥2857+税