ルネサンスからバロックへ―時代の過渡期を彩った壮麗なアンサンブル
テノール歌手で指揮者の福島康晴率いるエクス・ノーヴォ室内合唱団は、ルネサンス、バロックのイタリア宗教曲を中心に演奏するグループ。次の公演「ガブリエーリとシュッツ〜神聖なる響きの大伽藍〜」では、16世紀後半ヴェネツィアで「分割合唱(複合唱)」を用いて革新的な立体サウンドを築き上げたジョヴァンニ・ガブリエーリと、晩年の彼に師事し、イタリアの潮流をドイツに持ち帰ったハインリヒ・シュッツにフォーカスする。
注目は、17声や14声といった多声部で書かれたガブリエーリの作品。しかし発表されている合唱メンバーは9人だ。どうやって? 声楽だけで歌われるイメージが強いかもしれないルネサンスの合唱曲だが、じつは器楽と声楽を区別しない、あるいは任意に選択できるように書かれている場合が少なくない。今回も、「歌」と指定されているパート以外を器楽に割り振った。「コルネットやサクバット(トロンボーン)の輝かしい響きと歌声が混ざり合い、大きなスケールを生み出せる」と指揮者の福島。このあたり、「器楽も含めてのアンサンブル」というスタンスが彼らの指針でもあるようだ。
合唱メンバーにはソロでも活躍中の名前がずらり。今回はアルト・パートを女声やカウンターテナーでなく男声のテノールが歌うことで、テンションの高い充実した響きを狙う。
「始めから作り直す」という信条を込めたラテン語の「EX NOVO」にふさわしい、新しい視点、古楽アンサンブルの最前線に浸りたい。
文:宮本 明
(ぶらあぼ2019年10月号より)
2019.11/11(月)19:00 東京文化会館(小)
問:ムジカキアラ03-6431-8186
http://exnovochamberchoir.com/