5月の東京交響楽団定期演奏会の名演が早くもCDに。ジョナサン・ノットによるショスタコーヴィチの交響曲第5番は、思いのほか大きな構えながら、明瞭な金管の響きをはじめ、クリアで研ぎ澄まされたサウンドは健在。その上でノットはあえて予定調和にならない棒で東響をドライヴし、緊張感と熱気を存分に引き出す。特に第3楽章の張りつめた美しさと、終楽章の激しい追い込みが生み出す爆発力はトップクラスの表現。スターリン体制下で書かれた本作にまつわる問題意識と、それをも超えるような楽曲としての魅力、いずれも見事に伝える演奏で、ライヴの興奮がよみがえる。
文:林 昌英
(ぶらあぼ2019年11月号より)
【information】
SACD『ショスタコーヴィチ:交響曲第5番/ノット&東響』
ショスタコーヴィチ:交響曲第5番
ジョナサン・ノット(指揮)
東京交響楽団
収録:2019年5月、サントリーホール(ライヴ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00702 ¥3200+税