新国立劇場新シーズンは、ロシア・オペラの名作《エウゲニ・オネーギン》で開幕

 新国立劇場の2019/20シーズンが10月1日、ロシア・オペラの代表作《エウゲニ・オネーギン》(新制作)で開幕する。去る9月3日、キャストとカヴァー歌手、スタッフらが集まり稽古が始まった。
(2019.9/3 新国立劇場 Photo:J.Otsuka/Tokyo MDE)

 レパートリーの拡充を図る大野和士オペラ芸術監督は、第2シーズン目の柱としてバロック・オペラ、ベルカント、そしてロシア・オペラを挙げている。ロシア・オペラを新国立劇場の定番化するため、その第1弾として、チャイコフスキーの名作《エウゲニ・オネーギン》を選んだ。同劇場では実に19年ぶりの上演となる。

 原作は、帝政ロシア貴族社会の男女の愛のすれ違いを描いた、詩人プーシキンの格調高い韻文小説。ニヒルな青年貴族オネーギン、夢見がちな少女タチヤーナら若者たちの、憧れと絶望、死に直面する物語を、チャイコフスキーならではの情感豊かな音楽で綴られる。

 今回上演に際しスタッフ、キャストには、同劇場初登場となるロシア・オペラのスペシャリストが集結している。
 指揮は、ウクライナ出身で、ポーランド歌劇場音楽監督を務めるアンドリー・ユルケヴィチ。ローマ歌劇場、バイエルン州立歌劇場など欧州各地でも活躍しているマエストロだ。
「《エウゲニ・オネーギン》は、私が指揮活動をする前から携わっている作品で、いまは5年ごとに指揮しています。若い頃からこの《エウゲニ・オネーギン》の魅力に憑りつかれていました。ロシア・オペラはとても感情豊かで、魂が込められているのが特徴です。この作品に描かれた愛情を皆さんと一緒に分かち合いたいです」

アンドリー・ユルケヴィチ(指揮)

ドミトリー・ベルトマン(演出) バックには衣裳デザイン案

 演出は、モスクワの歌劇場ヘリコン・オペラの創設者・芸術監督のドミトリー・ベルトマン。ロシア・オペラをはじめ古典作品から現代ものまで、斬新な解釈で次々と新風を吹き込む俊英だ。《エウゲニ・オネーギン》はすでに8プロダクションを手掛けており、今回の新制作では、オペラ演出の先駆けと言われている、ロシアの名優で演出家のコンスタンチン・スタニスラフスキーが1922年に上演した際の演出をモティーフに、「劇場は博物館ではないので、私たちのアイディア、現代的な視点を加えた形で」、ロシア演劇の伝統を受け継ぐプロダクションとなる。
 舞台美術は、1922年の上演時にスタニスラフスキーが自らの住居を改装したホール(現在も“オネーギンホール”と呼ばれている)の4本の柱を舞台の背景にし、衣裳は、スタニラフスキが上演当時は現代服で上演していたが、今回はプーシキンの時代(1800年代半ば)にあわせて制作された。

「《エウゲニ・オネーギン》は、私が大好きな作曲家が書いたオペラです。宇宙だろうと日本だろうと場所は関係なく、人は同じように悩んだり苦しんだり、泣いたり笑ったりするものです。私は、彼の人生や音楽に憑りつかれ、ある発見をしました。彼の音楽はすべて、彼の人生そのものなのです。モスクワ郊外にある博物館でも、彼の遺したものを見てきましたが、チャイコフスキーの音楽には、単なる思いつきで書かれた部分は一つもありません。我々の解釈するチャイコフスキーは、まったくもってメランコリックな作曲家ではありません。情熱にあふれ、ある時は真っ赤な色を発しています。

 チャイコフスキーには実はある大事な法則があります。言葉(歌詞)と音楽の意味が対抗している。歌手が歌詞をそのままイラストのように表現すると間の抜けたものになってしまいます。例えば《スペードの女王》のリーザが歌う”出て行ってください”は”残ってください”という意味です。それをチャイコフスキーは自然に創っているのです。
 稽古は、チャイコフスキーの音楽を愉しみながらやりたいと思います」

舞台装置の説明をするベルトマン

左より:パヴェル・コルガーティン(レンスキー)、エフゲニア・ムラーヴェワ(タチヤーナ)

 ソリスト陣も魅力的なメンバーが揃った。タチヤーナには、2017年のザルツブルク音楽祭《ムツェンスク郡のマクベス夫人》カテリーナ・イズマイロヴァでセンセーショナルなデビューを飾り、ベルトマンが「まさに油ののった歌手」と絶賛するエフゲニア・ムラーヴェワ。オネーギンには、ボリショイ劇場をはじめ世界各地で同役を演じているワシリー・ラデューク、レンスキーには欧州の舞台で活躍するパーヴェル・コルガーティンが出演する。

左より:アレクセイ・ティホミーロフ(グレーミン公爵)、ワシリー・ラデューク(オネーギン)

イゴール・ネツィニー(美術)

 また、美術を担当するイゴール・ネツィニーについてベルトマンは、「おじいさんがモスクワ芸術座の初代支配人。イゴールの奥さんのタチアーナ・トゥルビエワ(衣裳)は、ネミロヴィッチ=ダンチェンコ劇場で最初の《ムツェンスク郡のマクベス夫人》イズマイロヴァを歌った歌手をおばに持ちます。夫婦で60本以上、世界中で一緒に仕事をしているスタッフです」と語った。

 なお、公演に先立ち9月23日(月・祝)には、演出家ドミトリー・ベルトマンをゲストに迎え、作品の魅力に迫るとともに、カヴァー歌手による演奏も行われトーク・イベントが行われる。こちらも必聴だ。


新国立劇場 チャイコフスキー《エウゲニ・オネーギン》(新制作)
2019.10/1(火)18:30、10/3(木)14:00、10/6(日)14:00、10/9(水)18:30、10/12(土)14:00
新国立劇場 オペラパレス
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999 
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/

オペラトーク『エウゲニ・オネーギン』
2019.9/23(月・祝)11:30開演(11:00開場)
新国立劇場オペラパレス ホワイエ
出演:ドミトリー・ベルトマン(演出)
歌唱予定楽曲
 手紙の場面「たとえこの身は死に至るとも」(第1幕第2場より)
 タチヤーナ:橋爪ゆか
 レンスキーのアリア「何処へ過ぎ去りしか」(第2幕第2場より)
 レンスキー:内山信吾
 ピアノ:石坂 宏(新国立劇場オペラ音楽ヘッドコーチ)
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/eugeneonegin/event.html

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