新シーズン開幕にふさわしい心揺さぶるドラマ
大野和士芸術監督の第2シーズンは、チャイコフスキーの《エウゲニ・オネーギン》新制作で開幕する。レパートリーの拡充を進める大野監督の主導で、新国立劇場の演目としては、実に19年ぶりの上演。深い心理描写とドラマ性が際立つこのオペラは、ロシアの文豪プーシキンの韻文小説とチャイコフスキーの美しく叙情的な音楽が結びついた傑作である。
演出は、モスクワ・ヘリコン・オペラの芸術監督ドミトリー・ベルトマン。ロシアの俳優で演出家のスタニスラフスキーの、1922年の演出をモティーフに現代的な視点を加えた、ロシア演劇の伝統を受け継ぐプロダクションだ。
苦悩する若き貴族オネーギンを演じるのは、ボリショイ劇場をはじめ、メトロポリタン歌劇場やミラノ・スカラ座等で活躍中の“オネーギン歌い”ワシリー・ラデューク。オネーギンに一途な想いを寄せる(第1幕〈手紙の歌〉)も失恋。その後、美しい女性へと成長するタチヤーナ役は、ザルツブルク音楽祭で大成功を収めたエフゲニア・ムラーヴェワ。オネーギンと決闘するレンスキー役は若手パーヴェル・コルガーティン。いまが旬のロシア人歌手たちが集結し、鳥木弥生、森山京子、竹本節子ら日本の実力派歌手たちが加わる豪華な布陣だ。
そして、ポーランド国立歌劇場音楽監督のアンドリー・ユルケヴィチの情熱的な指揮が舞台全体を引き締める。新シーズンも新国は開幕から見逃せない。今秋イチオシの公演だ!
文:柴辻純子
(ぶらあぼ2019年10月号より)
2019.10/1(火)18:30
10/3(木)14:00
10/6(日)14:00
10/9(水)18:30
10/12(土)14:00 新国立劇場 オペラパレス
問:新国立劇場ボックスオフィス03-5352-9999
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/