歌曲の共演者としても多くの演奏家の信頼厚く、全国的に活動を展開するピアニストの竹村浄子。彼女にとってシューマンは、デビューCDのプログラムにも選んでいることからもわかる通り、人生のテーマのような存在である。あたたかくも、どこか哀しみの表情も見せる“回顧”が描かれた「子供の情景」と鮮烈な愛情が溢れる「幻想曲 ハ長調」という組み合わせは、心の機微を繊細に描き出す竹村のピアニズムと非常に合致している。音色は柔らかくも多彩に変化し、次々移り変わる心情の変化を鮮烈に聴き手へと提示する。歌を愛する彼女だからこそ作り出せるシューマンの世界だ。
文:長井進之介
(ぶらあぼ2019年10月号より)
【information】
CD『竹村浄子プレイズ・シューマン』
シューマン:子供の情景、幻想曲 ハ長調
竹村浄子(ピアノ)
ディスク クラシカ ジャパン
DCJA-21044 ¥2500+税