400年前の失恋の痛みも、恋の駆け引きの危うさも、リアルな質感を伴い、我々の心を捉える。国内外の檜舞台、特に古楽シーンで、透明感あふれる美声を披露している鈴木美紀子。第2弾アルバムは、仏王アンリ4世やルイ13&14世の治世下で生まれた宮廷歌曲「エール・ド・クール」と古民謡を取り上げた。言葉や旋律の美しさ、感情の起伏を余さず掬い取る鈴木の表現は、コケティッシュで魅力的。さらに、名手つのだは、多くの個性的な女声歌手と共演を重ねるが、相手により、音色と表現法をがらりと変える。今回も、前奏の段階で、既に鈴木の声や歌いまわしを“予感”させてしまう巧みさだ。
文:寺西 肇
(ぶらあぼ2019年9月号より)
【information】
CD『美しい人は愛の庭に/鈴木美紀子&つのだたかし』
ぼくのかわいいアネットちゃん(ブルターニュ民謡)/美しい人は愛の庭に(ピカルディ民謡)/アルカデルト編:ねぇマルゴ ぶどう畑を耕しなさい(ロレーヌ・アルザス民謡)/ディディエ・ル・ブラン:やさしく魅力的なうぐいす/デュ・ビュイッソン:ランベール氏の死によせる哀歌/ランベール:あなたに冷たくされて 他
鈴木美紀子(ソプラノ)
つのだたかし(リュート)
ダウランド アンド カンパニイ
TS7247 ¥3000+税