【CD】浄められた夜/マティアス・ストリングス

 齋藤真知亜率いるマティアス・ストリングスの新盤は、バランスの取れたフレッシュな演奏を通じ、室内楽の歴史の綾をたどる。「浄められた夜」では、6人の織りなす弦が深い森を歩む男女の姿を立体的に描き出す。続いてブラームス「弦楽六重奏曲第1番」では、低音域を増強した分厚く入り組んだ書法が濃厚なロマンを捕まえていく。聴き進めるうちに、ブラームスを終生敬愛していたシェーンベルクが、写実的なドラマの背後に先達の編成の濃密さを継承していることに気づかされる。ここで導かれた過去を遡る眼差しは、ブラームスの向こうにさらにベートーヴェンの弦楽四重奏をも見出すことだろう。
文:江藤光紀
(ぶらあぼ2019年9月号より)

【information】
CD『浄められた夜/マティアス・ストリングス』

シェーンベルク:浄められた夜
ブラームス:弦楽六重奏曲第1番

マティアス・ストリングス
【齋藤真知亜 降旗貴雄(以上ヴァイオリン) 坂口弦太郎 松井直之(以上ヴィオラ) 宮坂拡志 村井将(以上チェロ)】

マイスター・ミュージック
MM-4061 ¥3000+税