ウィーンの伝統を継承する巨匠
今年85歳を迎えるイェルク・デームス。戦後のウィーンを生きて数々の大ピアニストから薫陶を受け、伝統を今に伝える。ウィーン楽友協会でのデビュー以来、第一線で演奏活動を続け、デビュー70周年を迎えた。近頃は毎年来日を重ねている巨匠が、今年も節目を祝うにふさわしいプログラムでリサイタルを行う。
ベートーヴェンのソナタ解釈についての著書もあるデームス。今回特に楽しみなのは、ソナタ第21番「ワルトシュタイン」と第30番だ。長きにわたり掘り下げられた音楽への洞察と、どっしり構えた体躯、自由な状態の腕と指先から繰り出される豊かな音色。すべてが一体となり、ベートーヴェンの神髄に迫る。また、フィッシャー・ディースカウやヨゼフ・スークらと共演を重ねてきたデームスは、伴奏者としても豊かな経験を持つ。来日中には、ヴァイオリンの三上亮、ソプラノの阿久津麻美とのデュオリサイタルにも出演。若手が伝統を受け継ぐ場面を目の当たりにすることになるであろう、こちらの公演にも注目したい。
文:高坂はる香
(ぶらあぼ2013年10月号から)
リサイタル ★11月9日(土)・東京文化会館(小) ローチケ Lコード37554
三上亮(ヴァイオリン)との共演 ★11月21日(木)・王子ホール
阿久津麻美(ソプラノ)との共演 ★11月24日(日)・Hakuju Hall
問:プロアルテムジケ03-3943-6677 http://www.proarte.co.jp