エドゥアルド・フェルナンデス(ギター)

ギターで辿るドイツとオーストリアの音楽

 毎回、新鮮なテーマを切り口に行われるクラシック・ギターの祭典「Hakujuギター・フェスタ」。今年は「音楽の旅〜ドイツ・オーストリア」と題して開催される。そのフェスタに2008年以来、実に11年ぶりに登場するのがウルグアイ出身の世界的ギタリスト、エドゥアルド・フェルナンデスだ。フェルナンデスはフェスタの最終日に出演し、ソロの他に福田進一とのデュオ、新作初演にも出演する。

「Hakuju Hallでの08年のフェスタではラテン・アメリカの作品を数々取り上げましたが、プログラミングも、ホールのアコースティックも素晴らしかった。ギターには最適の残響かもしれません。ホールの音響と雰囲気が良かったので、それにインスパイアされて演奏できました」

 今回のテーマはドイツ、オーストリア。フェルナンデスはそこでジュリアーニ、メルツ、J.S.バッハの作品を選んだ。

「ジュリアーニとメルツは共にウィーンで活躍しました。そのふたりを比較するのはとても面白いと思います。それぞれに作風は違うのですが、音楽的な土台は一緒だと感じています。ジュリアーニは古典派の正確な様式を学びましたが、一方で彼はベルカントの国イタリアの出身でもあり、豊かな感情表現を信条ともしていました。彼の作品『ジュリアナーテ』には“様々なセンチメンタルなアイディア”が詰め込まれており、ロマン派の極致と言っても過言ではありません。これは彼の最高傑作のひとつだと思います。メルツはシューマンやショパンとほぼ同時代に活躍しました。彼の『吟遊詩人の歌』は小品集で、ピュアなロマン派のスタイルを表現しており、器楽曲としてよくできています」

 そしてバッハの作品では自身の編曲により、「リュート組曲第1番」と「無伴奏チェロ組曲第2番」を取り上げる。

「まず『リュート組曲』ではほとんど手を加えていませんが、ギターの第3弦をGからF♯に半音下げ、ギターでのハーモニーを豊かにしています。『チェロ組曲第2番』では、楽譜通りだとあまりにも空虚に聴こえてしまうので、バッハがこの曲を管弦楽曲などに編曲するなら、こうしただろうという風に考え、音や対旋律の声部を増やして、ハーモニーをより完全なものにしています」

 福田とのデュオではブラームスの「主題と変奏」が演奏される。
「この作品は常に私のお気に入りなのです。ジョン・ウィリアムスによる編曲ですが、今回のテーマを考えると必須の曲でしょう」

 今年も凝縮したギター音楽の時間がHakuju Hallに流れるだろう。
取材・文:片桐卓也
(ぶらあぼ2019年7月号より)

第14回 Hakuju ギター・フェスタ 2019 音楽の旅〜ドイツ・オーストリア
2019.8/16(金)19:00 荘村清志ソロ、福田進一&河野克典 ドイツ歌曲の情景
8/17(土)18:30 福田進一ソロ、荘村清志 室内楽の世界
8/18(日)15:00 エドゥアルド・フェルナンデス ソロ、共鳴する珠玉のギター・アンサンブル
Hakuju Hall
問:Hakuju Hallチケットセンター03-5478-8700
※Hakuju ギター・フェスタの詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。
https://www.hakujuhall.jp/