新日本フィルのフォアシュピーラーを務める傍ら、サイトウ・キネン・オーケストラへの参加やソリストとしても活躍する川上徹のコダーイ「無伴奏」。派手な技巧で華麗に弾き飛ばす演奏もままある中、ここでの川上は卓越した技巧を遠心の方向ではなく腰の据わった求心のベクトルへ向ける。その音楽は落ち着きがあり、そして音楽の表情に実に深みがある。中でも第2楽章の味わいは絶品だ。宮川彬良、町田育弥の両作品は意外な併録曲と思えるが、あえて言えばコダーイのもう1曲の収録曲「アダージョ」と近親性のあるロマンティックかつリリカルな曲調で、チェロの歌謡的魅力を存分に生かしている。
文:藤原 聡
(ぶらあぼ2019年6月号より)
【Information】
CD『Három barátnak〜コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ 作品8 他/川上徹』
コダーイ:無伴奏チェロ・ソナタ op.8、アダージョ/宮川彬良:バラードール〜チェロとピアノのための/町田育弥:手紙〜無伴奏チェロのための、じいちゃんのエンドロール
川上徹(チェロ)
町田育弥 宮川彬良(以上ピアノ)
オクタヴィア・レコード
OVCL-00686 ¥3000+税