小泉和裕(指揮) 九州交響楽団

熟成コンビ7年目の気宇壮大なシーズン開幕


 このところ小泉和裕の充実が際立っている。4楽団のポストを兼務する引く手数多の名匠も今年70歳。持ち前の堅牢な構築と弦楽器を分厚く鳴らした壮麗な表現に円熟味を加え、精緻かつ雄弁な名演を随所で展開している。中でも特筆されるのが、九州交響楽団の2018年9月定期のマーラー「千人の交響曲」(CDで耳にできる)。小泉はこの大作を見事に構成し、こまやかな抑揚とニュアンスに富んだ熱演で圧倒的な感銘をもたらした。

 7月、九響で今度はマーラーの交響曲第3番を聴かせる。会場の改修工事のため、これが19/20シーズン=小泉音楽監督7年目の最初の定期。当初「夏の朝の夢」と題された同曲は、夏の開幕公演にまさしく相応しい。曲は、マーラーがアルプスの避暑地アッター湖畔で“自然への賛美”を描いた、全6楽章の超大作。第1楽章冒頭のホルン8本による印象的な旋律、トロンボーンの長いソロ、舞台裏の小太鼓、第3楽章の遠くで響く夢幻的なポストホルン、第4楽章の静謐なアルト独唱、第5楽章の女声&児童合唱の愛らしい歌声ほか、見どころ満載だし、美旋律が高揚する第6楽章は熱い感動間違いなしだ。

 「千人」で魅せた構築力と迫真性から、今回も小泉のアプローチへの期待は絶大。機能性を増した九響の精妙な響きや色彩感、日本屈指のメゾソプラノ歌手・清水華澄の表情豊かな独唱、「千人」でも主軸をなした九響合唱団、久留米児童合唱団等の清澄なコーラスにも注目が集まる。7年目の熟成に加え、来年3月に東京公演も控えて意気上がるコンビの気宇壮大なシーズン開幕を、ぜひ生体験したい。
文:柴田克彦
(ぶらあぼ2019年6月号より)

第375回 定期演奏会 
2019.7/27(土)15:00 福岡シンフォニーホール
問:九響チケットサービス092-823-0101 
http://www.kyukyo.or.jp/