【会見レポート】吉田 都が今夏上演の引退公演を語る

 英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団、英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルとして22年間活躍した吉田都が、今年現役引退することを発表した。2019年8月7日(水)、8日(木)、新国立劇場オペラパレスで行われる「NHKバレエの饗宴」特別企画 吉田都引退公演『Last Dance』が吉田の花道を飾る舞台となる。5月10日(金)、東京都内で記者会見が開かれ、吉田が現在の心境や本公演への思いを語った。
(2019.5/10 東京都内 取材・文:高橋森彦)

 会見冒頭、吉田は引退を決意した大きな理由として、20年9月に新国立劇場舞踊部門・次期芸術監督の就任を控えていることを挙げた(現在は新国立劇場芸術参与)。
「世界的に見て踊りながらディレクター業をされている方もたくさんいらっしゃいますが、私はこれから勉強しなくてはならないこともたくさんあります。生半可な気持ちではできない大きな仕事だと思って引退を決意いたしました」

 本公演の出演者は吉田の他、日本の6バレエ団の主役級ダンサーらが集い、さらに英国ロイヤル・バレエ団からプリンシパル(最高位ダンサー)のフェデリコ・ボネッリ、平野亮一、高田茜、ヤスミン・ナグディを含む一線級が揃う豪華なステージとなる(指揮:井田勝大、演奏:東京フィルハーモニー交響楽団)。
「(現役引退は) とても寂しい気持ちもありますが、素敵なメンバーたちと舞台に立てることはダンサー冥利に尽きます。プロとして踊ってきた35年間の集大成です」

 本公演は、吉田本人の手によるプロデュースで、プログラムの演出を彼女の信頼が厚い元英国バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の山本康介が担当。吉田が踊ってきた演目を紹介しつつ、世界的プリマの輝かしい軌跡を振り返る構成だ。吉田自身は英国時代に親しんできた演目から、フレデリック・アシュトン振付『誕生日の贈り物』、同じアシュトンの『シンデレラ』から第3幕のソロ、そしてピーター・ライト版『白鳥の湖』第4幕パ・ド・ドゥを踊る。
「『誕生日の贈り物』の他のパートを踊ったことはありますが、マーゴ・フォンテイン(英国バレエを代表する歴史的名バレリーナ)のために創られたパートは今回が初めて。古典作品が多くなりますがウィリアム・フォーサイス振付『精確さによる目眩くスリル』を英国ロイヤル・バレエ団のメンバーが踊って日本で上演できることは嬉しいです」

 『誕生日の贈り物』と『白鳥の湖』のパートナーは英国ロイヤル・バレエ団時代の名コンビのボネッリ。そして会見の席上で、吉田の英国ロイヤル・バレエ団の先輩にあたる大物イレク・ムハメドフが来日し、彼と共演することも明かされた(演目など詳細未定)。
 「(バレエ人生を)振り返りますと、本当にたくさんの皆様のおかげでここまで踊ることができました。感謝の気持ちを込めて舞台に立ちたいと思います」と謙虚に抱負を述べる。

左:NHK音楽・伝統芸能番組部チーフプロデューサーの八木順也

 主催者を代表して、NHK音楽・伝統芸能番組部チーフプロデューサーの八木順也が登壇し公演の概要を説明。本公演の収録映像はスーパーハイビジョンで収録し、BS4Kチャンネルにて今年10月に放送され、BSプレミアム「プレミアムシアター」でも放送を予定する(日時未定)。「感動のステージを一人でも多くの方、日本全国隅々まで届けたいという思いを持って臨む次第です」と制作に並みならぬ力を注ぐ。

 吉田は質疑応答で、現役引退に心残りはないか? と問われ、「自分の人生の中から舞台に立つことが無くなることが想像できません・・・」と率直に心情を吐露した。だが後進に伝えたいことやバレエ芸術の魅力についての質問に対し長年の経験を踏まえ誠実に話す姿から、舞台を降りてもバレエへの愛情は変わらず新たなステージで力を尽くすだろうと確信させる。優雅で香り立つような踊りと物語る表現力で多くの観客の心を虜にしてきた類まれなバレリーナが自ら「集大成」と位置付ける本公演は、歴史的な舞台になりそうだ。

【公演情報】
「NHKバレエの饗宴」特別企画
吉田都引退公演『Last Dance ーラストダンスー』

2019.8/7(水)14:00、8/8(木)18:30
新国立劇場オペラパレス

出演:
吉田都
フェデリコ・ボネッリ(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
平野亮一(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
ヤスミン・ナグディ(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)
ジェームズ・ヘイ(英国ロイヤル・バレエ団ファーストソリスト)
ヴァレンティーノ・ズケッティ(英国ロイヤル・バレエ団ファーストソリスト)
ミーガン・グレース・ヒンキス(英国ロイヤル・バレエ団ソリスト)
小林紀子バレエ・シアター:島添亮子
新国立劇場バレエ団:井澤駿、小野絢子、福岡雄大、米沢唯
スターダンサーズ・バレエ団:池田武志、渡辺恭子、石川聖人、石山沙央理、
塩谷綾菜、髙谷遼
谷桃子バレエ団:永橋あゆみ、三木雄馬
東京バレエ団:沖香菜子、秋元康臣
牧阿佐美バレヱ団:阿部裕恵、水井駿介

*出演を予定していた高田茜(英国ロイヤル・バレエ団プリンシパル)は怪我のため出演できなくなりました。

田勝大(指揮)
東京フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)

演目:
「誕生日の贈り物」 -Birthday offering-
「精確さによる目眩くスリル」
-The Vertiginous Thrill of Exactitude- 「Flowers of the Forest」から
「シルヴィア」から
「アナスタシア」から
「くるみ割り人形」グラン・パ・ド・ドゥ ほか

チケット:2019.5/25(土)発売

公式サイト
https://www.nhk-p.co.jp/ballet/

  • La Valseの最新記事もチェック

    • ジャズとクラシックのハネムーン| クラシック・ファンのためのJazz入門 第5回
      on 2019/12/13 at 01:00

      text:藤本史昭 ところで、ジャズとクラシックは相反する音楽…そういう印象を持っている方は、実は少なくないのではないでしょうか。かくいう僕も、「その相反するものも、実はこんなにうまく混淆してますよ」ということを言いたいがためにこの連載を始めたわけで、つまりは自分の中にもそういう思いが潜在的にあるのかもしれません。 そのように考えてしまう最大の理由はやはり、クラシックが(基本的には)書かれた音を再 [&#8230 […]