合唱大国発、最高峰のアンサンブルに心酔
ヨーロッパにはレベルの高いプロの合唱団が多数存在しているが、歌劇場所属の合唱団と並んでトップレベルの団体が多いのがラジオ局所属の放送合唱団である。なかでもこのラトヴィア放送合唱団は、合唱の伝統が息づく同国を代表する団体で、世界最高峰との呼び声が高い。
2年前の初来日では、どんなにハーモニーが複雑で、不協和音であろうとも、常に安定した響きと美しい音色を聴かせてくれたことが忘れ難い。極めて辛口な発言で知られるオーボエ奏者・指揮者・作曲家のハインツ・ホリガーをして、自作の演奏を任せられるのは彼らしかいないと言わしめたことからも、その実力はうかがい知れる。
2度目の来日となる今回は、まず前半に彼らの実力を最大限に感じられるラトヴィアの合唱曲が歌われる。ヴァスクス、エセンヴァルズ、カールソンスなど、一見、馴染みのない名前が並んでいるが、いずれも合唱界では世界的に評価されている作曲家ばかり。大河のように絶え間なく流れ続ける美しい響きに身を任せるだけでも、他では得難い体験となるはずだ。
後半は、佳品ながら、なかなか優れた演奏で聴く機会のないブラームスのワルツ集「愛の歌」──しかも「新・愛の歌」を含めた全曲版を聴けるというのも嬉しい。この作品は、のちにピアノ連弾曲に編曲されたことからも分かるように、合唱と同じぐらい、伴奏パート(ピアノ連弾)が重要。それだけに津田裕也、北村朋幹という実力者を揃えているのも安心だ。指揮は同合唱団音楽監督のシグヴァルズ・クラーヴァ。世界トップの合唱はこれほどまでに凄いのかと驚くことだろう。
文:小室敬幸
(ぶらあぼ2019年5月号より)
2019.6/2(日) 15:00 すみだトリフォニーホール
問:トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212
https://www.triphony.com/
他公演
2019.6/4(火)神奈川/フィリアホール(045-982-9999)